ジェネリック医薬品の問題点を考えてみよう!
「ジェネリック医薬品」という言葉はテレビCMなどでの影響で人々に広く浸透し、最近ではよく耳にするようになりました。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ成分・同じ効き目があり、しかも安いといった認識があります。
厚生労働省が利用を促進し、新薬と同様の効き目と安さが売りのジェネリック医薬品。
どのような薬なのか説明します。



ジェネリック医薬品はどんな薬なの!?
まず、「先発医薬品(新薬)」とは、厚生労働省より製造販売の承認を得て販売開始された、新規に開発された医薬品の事を言います。
新しい薬の開発には、何十年にも及ぶ長い研究期間と莫大な費用がかかるため、新薬を開発する事ができるのは、資金力のある大手の医薬品メーカーに制限されています。
新薬を開発した企業は、医薬品の成分や製造方法などについて様々な特許権を取得し、20年間の特許期間中は新薬の製造・販売を独占することができます。
延長を申請すると最長5年の延長が可能です。
これは、新薬を開発する時にたくさんの時間とコストがかかるため、ビジネスとして成り立たせるために特許期間を与え独占的に販売できるようにし、利益を優先的に得られるようにしてあります。
その後、先発品の特許期間が満了すると、その薬と同じ有効成分、同じ効果の薬を他の医薬品メーカーが製造・販売できるようになります。
この薬を「ジェネリック医薬品」または、後発品といいます。
>>>>ジェネリック医薬品とは? | 第一三共エスファ株式会社

本当に新薬と同じ成分・同じ効き目なのか?
ジェネリック医薬品は新薬と同じ有効成分が含まれ、同等の効き目を持つとされています。
しかし、実際には差異があることがあります。
なぜなら、ジェネリック医薬品を生産し販売するためには、新しい薬の物質に与えられる「物質特許」、特定の物質に対する新しい効果に与えられる「用途特許」の2つの期間が明けていなければなりません。
この2つの特許が満了することによって、先発品と同じ「有効成分」で後発品(ジェネリック医薬品)を作れるようになります。
しかし、特許には上記の2つ以外にも、新しい製造方法に与えられる「製法特許」や、製剤の仕方に与えられる「製剤特許」などがあり、「物質特許」と「用途特許」が満了していたとしてもこれらの特許には有効期間が残っている場合が多くあります。
もし、製法特許が残っている場合は、薬のつなぎや、コーティング部分に使われる添加物を先発医薬品と完全に一緒にすることはできません。
また、製剤特許が残っている場合は、薬の剤形(錠剤・カプセル・粉末)も、先発医薬品と同一の物にすることができません。
例えば、同じ有効成分が同じ量だけ入っていたとしても、添加物や形状が異ることにより、薬が体に吸収される速度や分解される状態が変わり、作用も変わってしまう可能性があります。
●薬の作用が多少異なるのになぜ効果を変わらないとされるのか?
1.効果を促進または打ち消す成分を含む添加剤の使用を禁止
なぜジェネリック医薬品が新薬と同じような効果を謳っているかというと、有効成分の効果に影響を与える物質を添加剤として使用することを公式に禁止していることがあります。
ですので、成分を意図的に促進させたり、妨げたりすることはできません。
2.有効性の試験で差がない
厚生労働省は「ジェネリック医薬品の有効性の試験」において許容域を±20%と定めていて、この範囲内の数値であれば「統計学的に見て先発品と差が無い」としています。
厚生労働省は「許容域の幅は、ジェネリック医薬品と先発医薬品の治療効果の差を意味するわけではなく、医薬品を服用した後の血中濃度が、被験者の体質や体調によって大きくばらつく中で、統計的な評価を適確に行うために設定されたものであるので、この許容域を満たせば、治療効果は安全域をもって同等となる」と見解を示しています。
上記の事から、ジェネリック医薬品は厳密的に言うと「効果が完全に同じ」というわけではなく、薬によってある程度の差異を前提にしているということが分かります。
>>>ジェネリック医薬品への疑問に答えます|厚生労働省:PDF

「ジェネリック医薬品」のデメリットについて
新たに開発された薬の値段が高いのは、メーカーが先発医薬品を販売して得た利益から、これまでにかかった膨大な開発コストを回収し、また新たに薬を開発するための費用も生み出さなければいけない為です。
もし、新薬が開発された直後に価格の安いジェネリック医薬品が普及してしまうと、新薬開発ビジネスのモデルが崩れ、先発医薬品メーカーは開発にかけた費用が回収できずに、次回の研究のための新たな薬の開発に費やせるコストが捻出できなくなってきます。
最悪の場合、会社ごと倒産してしまう可能性もあります。
新薬を開発するということは、工程内での新しい発見などによって治療期間の短縮が可能になったり、病気予防の方法が見つかったりすることがあるので、国民が負担する医療費の削減に繋がります。
ですので、常に新薬を開発し続けて行くということは、「安い薬代での医療費の削減」という厚労省が掲げるスローガンに対して「長期的に見たときに医療費の削減に繋がる」とも考えられるのです。